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トルコ南東部のシリア国境付近を震源とする大地震(現地時間2月6日未明)で、甚大な人命被害が出ている。倒壊した建物にはまだ、多くの人々が取り残されているとみられる。救命・救助は時間との戦いだ。
瓦礫に埋まった子供に救助隊が「大丈夫だ」と声をかける。倒壊したビルの前では取り残された家族の救助を求め、被災者がカメラに向かって泣き叫んでいた。現地の映像からは極めて深刻な被害状況が伝わる。時間の経過とともに増えていく両国の死者数に、胸が痛む。
日本政府はトルコに全面的支援を表明し、国際緊急援助隊・救助チームを派遣した。先発隊は7日にトルコに入っている。
欧米各国をはじめ、中国、ロシア、ウクライナも緊急支援に迅速に動き、活動を始めている。余震が続き、被害はさらに拡大する恐れがあるという。
二次災害を厳重に警戒しなければならない。そのうえで「救えるかもしれない命」を一刻も早く見つけ出し、一人でも多くの人を助け出してもらいたい。
ただ、内戦状態が続くシリアでは、アサド政権の支援が反政府色の濃い被災地には届かないという事態も伝わってくる。国際社会は立場の違いを超えて、トルコとシリアの支援のために結束する必要がある。国連には今こそ、調整力を発揮してもらいたい。
トルコ周辺は複数のプレート(岩板)がせめぎ合う地震多発地帯で、繰り返し地震被害に遭ってきた。6日未明の地震はマグニチュード(M)7・8とされ、1万7千人余が犠牲になった1999年のトルコ大地震と同じだ。阪神大震災(1995年)のM7・3より規模が大きい。
東日本大震災(2011年)で日本は多くの国から支援を受けた。トルコの救援隊は長く行方不明者の捜索にあたってくれた。
人命救助、不明者の捜索、被災者の生活支援、復興と防災に向けた取り組み―と、被災地が求める支援は時間とともに変わり多様化する。
地震、災害の多発国である日本は、被災地が直面する困難や被災者の切実な願いを身に染みて知っている。トルコ、シリアの地震被災者を物心両面で支えていく意思を持ち続けたい。
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2023年2月9日付産経新聞【主張】を転載しています